高校生の不登校の原因と対応 ・ 早期解決に向けて
高校生は、不登校になることが本人の将来や人生に大きく影響する年代です。文部科学省の調査によると、高校生の不登校の割合は65人に1人ですが、高校は義務教育ではないため、先生のフォローが薄く中退するケースも多いので、高校生の不登校は、実際の人数はもっと多いと言えます。
子どもの人生を考えると、できれば高校に行って大学に進学してほしい、せめてアルバイトでも何でもいいので、外に出て社会と交わりながら生きてほしいというのが、親の本音です。
一方で、高校生の不登校生は、ゲーム・スマホ・ネットへの依存度が強くなり、親への反発も激しくなる場合が多いです。生活リズムが崩れて、髪の毛や身なりも乱れていき、親の悩みも深くなっていきます。
高校生という年代を踏まえて、お子さまの不登校の原因をきちんと理解し、適切なサポートを利用しながら対応しましょう。
高校1年生の不登校の原因 -義務教育からの変化に対する戸惑い-
高校生からは10代の後半になり、いつまでも子どもでいられないと誰もが実感し始めます。大人になって社会に出ることを少しずつ考えないといけない一方で、お金も経験も能力もなく、将来に対する具体的なイメージがない中で不安を抱くのが高校生です。そうした中で、様々な葛藤が生まれて不登校になっていきます。
多感の時期における環境の変化
小学校や中学校の入学時も同じような環境の変化はありましたが、当時はまだ無邪気な子どもです。15歳~16歳の自尊心が強くて繊細な時期に新たな人間関係を築いていくのは、うまくいかないこともあるのです。
なんとなく学校の空気になじめなかったり、クラスメイトとうまが合わずに、学校に行く気がおきなくなることがあります。
非義務教育化による不登校
高校からは義務教育ではなくなり、自分の意思で行かなければならなくなります。一方で、日本の高校進学率は97%を超えており、特に意思がなくても進学することが”当たり前の流れ”になっています。
そんな中で、「勉強が嫌い」、「学校が楽しくない」、「行く意味が見出せない」、「家が貧しい」、「働きたい」といった想いが芽生えた場合は、不登校になりやすくなります。小学生の時は精神的に未熟な子どもが不登校になりやすいのですが、高校生になると、むしろ頭の良い子や精神的に成熟している子ほどそのような考えを抱き、不登校になってしまうのです。
学習内容の高度化
高校になると、数学・物理・化学などの理系科目を中心に学習内容が一気に難しくなっていきます。中学生までは勉強が得意だったのに、高校生でつまづく場合は非常に多く、勉強への自信が自分の中での拠り所になっていたり、親の期待が大きい場合は、不登校になってしまいます。
高校2年生の不登校の原因 -理想と現実のギャップや将来への不安-
思い描いていた高校生活と現実
高校に入学する前は、高校生活に対して思い描いていた理想が少なからずどの子どもにもあったはずです。しかし、2年生になれば高校生活の先行きが見え、理想と現実のギャップに誰もが気づきます。
そうなった時に、高校は義務教育ではないので、行く意味がないと考えることがあります。
将来への不安による不登校
高校によってスケジュールは異なりますが、高校1年生の終わりか2年生のはじめに、多くの高校生が文系コースか理系コースかを選択します。それをきっかけに、「将来にどうなりたいか」、「社会に出たら何をしたいか」を考えるのですが、答えがすぐに見つかるわけではありません。また、仮に決めたとしても、本当にそれが自分がやりたいことなのかという疑問が心に残ります。
そうした将来に対する漠然とした不安や、何もやりたいことやなりたいものがない自分がダメな人間に思えて、元気を失うのです。
高校3年生の不登校の原因 -進路選択の不安と大学受験のプレッシャー-
高校3年生になると、いよいよ大学受験と卒業が迫ってきます。「大人」という言葉が何歳からを意味するのかは難しいところですが、同世代に就職する者がでてきたり、自動車の運転免許を取得できるようになる18歳は、まさに大人への第一歩に当たる年齢と言えます。
進路選択の不安
自分なりの将来に対する考えをもとに、就職先や進路(大学・専門学校)を決め、それに向かって進みます。しかし、本当にそれでいいのかという不安は、最後まで完全にはぬぐえません。
大学受験の場合は、自分の学力に合わせて大学を選択するので、背伸びをしても控えめな選択をしても、これでよいのかという気持ちは残ります。就職であれば、周囲の大半は専門学校や大学に行くので、人と違う道を歩むことや社会に出ることへの不安があります。
受験のプレッシャーによる不登校
あとから振り返れば浪人生活も楽しかったと言えるかもしれませんが、高校3年生にとって受験に失敗することは自分自身の存在を否定されるに等しいことです。プレッシャーを感じて不安定になっているので、些細なことでも親や兄弟と衝突することがあります。
勉強が順調に進まず、志望校の合格が難しくなると、受験から逃げ出すために、不登校になって自分の部屋にこもることがあります。
高校生の不登校の対応 -原因を探りすぎず、不登校を認めてあげよう-
まずは学校を休ませる
子どものあせりや不安感を受け止め、頑張りを認めてあげてください。休み始めたら、本人にはしばらく休んでもいいことを伝え安心感を与えましょう。前日に行くと言っていたのに行けなくても、理解を示してあげてください。
不登校の原因を理解する
落ち着いてゆっくり話ができる機会を子どもと持つようにしてください。ただ、学校に行きたくない理由を言わない場合や言えない場合も多いです。その時は、聞きすぎてはいけません。何度も聞かれることで不登校の自分への罪悪感が増しますし、親が納得しそうな理由をとりあえず言って、あとから本人が苦しむことも多いからです。不登校の理由は、いじめの有無の徹底的な確認は必要ですが、それ以外はわからなくてもかまいません。なんとなく大体の事情を察することができれば十分です。最初に書かれた高校生特有のストレスによるものだと理解してあげてください。
罪悪感を軽くしてあげる
本格的に不登校になると、学校に行けない自分自身への罪悪感から逃れるために、ゲーム・ネット・スマホに依存したり、夜更かしが多くなって生活リズムが乱れることが多いです。家族と会話をしなくなり、激しく反抗することもあります。
これは、本人が自分で解決するしかありません。不登校の自分自身と向き合い、不登校になった原因や今後について、自分で考えるしかないのです。ただ、まわりが罪悪感を軽くしてあげることで、苦しい期間を短くすることは可能です。
「学校に行っても行けなくてもどっちでもいいよ」、「そんなことであなたの価値は変わらないから大丈夫」、「しようと思ってもできないことっていっぱいあるよね」といったような親の言葉があれば、落ち着いて自分自身と向き合いやすくなるはずです。
興味のあることややりたいことを応援する
学校に行ってなければ、何をしてもいけないわけではありません。むしろ、好きなこと、得意なこと、興味のあることをどんどん応援し、そういったところでのがんばりをほめてあげてください。学校以外の場での取り組みの中で、成功体験をつんだり、まわりからほめられることは、自己肯定感や自信の形成につながり、不登校からの回復に大きく寄与します。
また、可能であればお手伝いをお願いしてみてください。家の中で役割を得ること、感謝されることも、自信につながっていきます。
元気が出てきたら色々な選択肢を提示する
今の若者には多様な人生の選択肢があります。色々な高校がありますし、高校卒業認定試験を利用すれば大学受験資格も得られます。社会に出たときに少々年齢が高くなっていても、企業側が気に留めない場合も多いです。
元気が出てきて、今後のことを話題にできる精神状態になれば、色々な選択肢を提示してみてください。各種アルバイト、通信制高校、定時制高校、留学といった選択肢や、色々な職業を、ぜひ紹介してあげてください。その時には、特に反応を見せなくてもあとから思い返す場合もあるので、決して無駄にはなりません。